紫陽花なアイツ
葉介の部屋に入った。
あたしは勝手に、葉介の回転椅子に座る。
そんなあたしを見かねたように、回転椅子の背もたれを掴まれ、ベッドの前まで移動された。
「そういえば、『葉介の走る姿が好き』って嫌だった?」
あたしは聞く。
葉介は正面のベッドの上に胡座をかいて、あたしを見る。
「嫌じゃねーけど。
お前が好きなのは、走る俺だけなのかと思ってた。」
寂しそうに言う。
あたしは首を横に振った。
走らない葉介だって好きだ。
「…走る葉介も好きだけど。
優しい葉介が一番好き。」