紫陽花なアイツ
葉介は静かに、話し始めた。
「中三の春の大会、県外でやったんだけど。
その日、事故った。」
ぐわんと視界が歪んだ気がした。
実際そういう訳ではなくて、動揺が酷かった。
「じ、事故?バイクで行ったの!?」
パニクったあたしは、口走る。
「落ち着け。中三はバイクの免許持ってないし、少し車に跳ねられただけ。」
あぁ…少しだけ。
「それで、リハビリして普通に走れるようにはなったけど…前みたいに走るのは無理だった。」
“無理”
絶対的なその言葉は、圧迫感がある。
「それで、高校ではもう陸上はやりたくないって思った。」