紫陽花なアイツ
葉介はいつも優しい。
贔屓(ヒイキ)目かもしれないけど、同学年の男子より格好良い。
それに、足が速い。
そんな葉介があたしにとって、何よりの自慢で失いたくないもの。
「葉介、同じクラスだったらどうしよう!」
「は?」
無口なうえ、表情の少ない葉介が片眉をピクリと動かす。
「教科書忘れたら、貸してくれる人がいない!」
「…あぁ、そういうことか。」
葉介は納得した様子で、あたしはクラス発表の紙を見る。
人が沢山いた。
それはもう、小学校なんて比じゃないくらいの。
沢山の人に圧倒されながらも、張り出された紙を見るとあたしの名前はA組に入っていた。
「葉介は?」