紫陽花なアイツ
やっぱり…。
ここまで来て、あたしは落胆。
雨が降り始めた。
でも小雨だし、走ればバス停までは行けるかも。
「帰んのかよ。」
急に、誰かが横から声を出した。
あたしじゃないよね?
と少し横を向くと、背の高い男子。
「なっ…。」
葉介がいた。
「雨、降ってるけど。」
あたしの動揺に気付かないのか、無視してるのか。
「帰るよ。」
平然と答えた。
「俺も帰ろっと。」
壁に寄っ掛かっていた体を起こして、葉介は言った。
…いやいや。
君がいるから、あたしは帰るんだよ?
「傘持ってないんだろ?」
葉介は傘立てから黒いどこかのスポーツメーカーのロゴ入りの傘をだす。
「自分の?」
あたしは聞いてみる。
「他人様の物盗むまで、俺汚れてねーから。」
呆れ顔で言われた。
ほら、行くぞ。と腕を引っ張られて、外に出た。