紫陽花なアイツ
「ねー。夜志乃、どうして何も言わずに出て行っちゃったの?」
学校に行くと、真生に問い詰められた。
「…お腹痛くなっちゃったから…。」
あたしは何回も謝って、そう告げた。
「そういえば、紫陽花の人も途中で帰っちゃったんだよ。」
紫陽花の人。
葉介は、いつもみんなからそう呼ばれる。
嫌じゃないのかな。
名前を覚えて貰えない。
「夜志乃ー?」
頭がぼーっとした。
なんで、葉介はあたしの後を追いかけてきたんだろう?
…なんて、都合の良い解釈だなぁ。
追いかけてきた訳じゃない。
きっと、二組のカップルに囲まれて遊ぶ女がいなかったから。
初めから、帰る事を決めていたのかもしれない。
…あたしに会った時から。