紫陽花なアイツ
…そ。
「…爽介?」
あたしの言葉に、視界の隅で我に返った葉介。
突然。
突然だった。
突然で、なんだかよく分からなかった。
「夜志乃。」
久しぶりに名前を呼ばれた。
でも、葉介があたしの名前を呼ぶタイミングが。
あたしが見たタイミングと少しずれた。
だから、あたしは、葉介の言葉を聞いたけど、振り向けなかった。
葉介が凝視したものをあたしも凝視していたからだ。
そこには、久しぶりに見る少し髪の毛の伸びた爽介。