紫陽花なアイツ
近づけた、奇跡だ、なんて思っているうちにすぐに離れていく。
それは、今始まった事なんかじゃないのに。
少々戸惑っている自分がいた。
「夜志乃。」
今度ははっきりと聞こえた。
葉介の声じゃなかった。
周りを見回す。
「どうしたの?」
一緒に回っていた一人の友達が気付いて、あたしを見る。
「あ、ごめん。先行っててくれる?」
うん、と返事が返ってきた。
その途端に、肩を掴まれた。
「夜志乃。」
三度目の声は近くからだった。
優しい声。
でも、葉介じゃない…
「久しぶり、夜志乃。」
振り返ると爽介がいた。