紫陽花なアイツ
屋台の一角を曲がる。
思わず、息を呑んだ。
「…っ。」
葉介と浴衣姿の女子が並んでいた。
こっちに進んでくる。
…花火買ってこーよ。
近くのコンビニ寄るか。
そうしよぉ!!…
そんな会話が横から流れた。
あたしはココにいたのに。
あたしは確かに、ココに存在したのに。
…葉介は、あたしを見なかった。
残されたあたしの足は、前にも後ろにも進まなくて。
「…ばーか。」
一人でそう呟いた。