紫陽花なアイツ

「おはよう。」

あたしもにっこりと返した。

その後、不覚にも溜め息が出た。

「何?なんかあった?」

挨拶をした後、自分の顔を見られて溜め息をつかれたら、それはさぞ困惑するだろう。

あたしだって、本当は困惑してるのに。

爽介が結婚するのを知って、なんで葉介はあたしと爽介が会うのを避けたのか。

なんで、あの朝、あたしの家に来てくれたのか。

分からないことだらけ。

それでも、葉介は簡単に近づいた距離を、簡単に離していく。

あたしは動けない。

動かないまま。





< 85 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop