苺のアップリケ
「あたしが好きなとこ…。」

三つ並んだ小屋の前に立ったひよりは、ボケッと口を開けてウサギを見た。

あ? 外した?

「こよみって……。」

言ったきり黙るから、僕はそわそわ落ち着かない。

「…ひ…より…?」

覗き込んだひよりの目から涙が落ちた。

「なっ、どうしたの? 嫌だった? ここじゃないとこが良かった?」

慌てて肩をつかんでひよりと向き合うと、ひよは泣き笑いの顔をして僕を見た。

「バカじゃないのっ。あたしはオコチャマかっ。……もう、高校生なんだよっ。…こよみのバカ。」

笑いながら泣くから、僕はどうしていいのかわからずにひよりを抱き締めた。

「…うん。…ごめん。」

「…んとにバカ。」

抱き締めた腕の中で、ひよりが小さく震えるから、僕はひよが可愛くて抱き締める腕に力を込めた。
< 21 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop