苺のアップリケ

普段は大口開けてってほどではないにせよ、それなりに口を開けて笑うひよが浮かべた微笑み。

目を閉じたせいなのか、いつもより大人びて見えて、見た瞬間、胸の奥で何かが騒いだ。

何か言わなきゃ。

ひよの目が開く前に、何か伝えなきゃ。

今日、二度目の嫌な感覚。
この瞬間が先を決めるような。

手で触れられそうなほど確かな感触が胸の奥でざわついて、握りしめた掌がじっとりと汗ばんだ。

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