苺のアップリケ
「こよみくんっ。」
「なに?」
いくら昼休みで教室がざわついていても、こんなに何度も呼ばれれば周りが注目するのがわかりそうなものなのに。
美奈津は近づくオレだけを見て、笑顔になる。
あの日。
オレが忘れたいあの日から数日たったある日、美奈津はひよりの後ろに隠れるようにして現れ、「好きです。付き合って下さい。」と言った。
「いいよ。」
答えはそんな風だったと思う。
「えっ、ほんとに?」
声を裏返らせてそう言った美奈津がどんな表情をしていたのかはわからない。
オレの目は、ひよりを見ていた。
美奈津の隣で、俯きがちに成り行きを見守る困ったような顔を見ていた。