苺のアップリケ
顔だけ向けた僕は明らかに不自然なはずなのに、
「あら。そうなの? じゃあ、続きは夕方ね。」
おっとり花に話しかけた。

…助かった。

おばさんの暢気さが僕を落ち着かせた。

何とかなったな。

また思いだしそうになる頭を必死で回転させて、二階の窓を見た。

間違いなく、遅刻だな。

さっきまでの焦りがすっかり消えた。

「こよちゃんは何の教科が好き?」

気づけばおばさんが僕の足下の雑草を抜いている。

クラスの女の子みたいな質問がとてもとてもおばさんらしい。
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