苺のアップリケ
「なにって、勉強なんか嫌いだよ。強いて言えば数学?」

おばさんは迷いなく草を抜いていく。

「おばさん、それ、おじさんがこの間植えたやつじゃない?」

一際大きな株に手をかけたおばさんがおっとりと振り返った。

「こよちゃんは本当にひよが好きなのね。」

「っ。」

爆弾発言で僕の口を封じて、それを全く気にせずに玄関に目を向けた。

「ひよちゃん、用意できたのね。」

おばさん、狙ってるよね。絶対、僕を焦らせて楽しんでるよね。

赤くなって振り向けない僕を無視して、ひよりに笑いかけるおばさんは、やっぱり年相応に大人だった。

「…こよ、行こう。」
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