苺のアップリケ
一瞬だけ目があった。
すぐにそれた目は、見たことがないほど真剣だった。
自分で話し出したくせに、まさかこんな反応が返ってくるとは思っていなかったオレは、簡単に言葉につまる。
「なんてって…普通に。」
「……普通って…なんだよ。」
「だから、別れようって。」
「あ、そう。」
さっきまでマジだったくせに、椅子を揺らして興味無さそうにペンを回す笹鳴をジッと見た。
「…お前、もしかして、好きなの?」
オレって勘が鋭い?
驚きなのか喜びなのかイマイチはっきりしないものの、救われたような安心感でにやけるオレを、笹鳴は顔色一つ変えずに見返した。