苺のアップリケ

一瞬だけ目があった。

すぐにそれた目は、見たことがないほど真剣だった。

自分で話し出したくせに、まさかこんな反応が返ってくるとは思っていなかったオレは、簡単に言葉につまる。

「なんてって…普通に。」

「……普通って…なんだよ。」

「だから、別れようって。」

「あ、そう。」

さっきまでマジだったくせに、椅子を揺らして興味無さそうにペンを回す笹鳴をジッと見た。

「…お前、もしかして、好きなの?」

オレって勘が鋭い?

驚きなのか喜びなのかイマイチはっきりしないものの、救われたような安心感でにやけるオレを、笹鳴は顔色一つ変えずに見返した。

< 60 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop