苺のアップリケ
「二人で帰るのって久しぶりだね。」
放課後、隣を歩くのは、ひよりじゃなくて美奈津だった。
「あぁ、そうかな?」
「そうだよ。…二人きりって、やっぱり嬉しい。」
気のない返事を返すオレに、美奈津は頬を染める。
その様子が、本当に嬉しそうで、遠慮がちなくせに当たり前のように繋がれた手を放すこともできない。
オレは今日こそ別れ話を切り出すつもりだった。
もう、言う場所は決めてある。
美奈津の家の近くの公園。
近くに大きな公園があるせいで、ほぼ無人の小さな公園は、普段から人がいなかった。
あそこなら、美奈津もすぐに家に帰れるし、気まずい時間を心配しなくてもいい。