苺のアップリケ
そんな姑息な考えを打ち砕くように、今日の美奈津はいつにもまして楽しそうに隣を歩く。
「こよみくんって、本当に優しいよね。あたし、彼女になれて本当に幸せ。」
「…優しくないよ、オレ。」
罪悪感で重くなった口でぼそぼそ返事をしても、美奈津の笑顔は消えなかった。
「そんなことないって。あたし、知ってるよ? こよみくん、学校の近くのバス停で泣いてた子供を助けてあげたでしょ?」
幸せそうに頬を染めながら、時々笑いかけてくる。
「は? いつの話?」
眉間にしわを寄せても、美奈津は話せることが嬉しいとでもいうように笑い出した。