苺のアップリケ

「忘れちゃうなんて、こよみくんらしいね。」

オレらしい?
それほどオレを知らないだろ?

反感に近い感情を持て余して目を伏せた。

「それ、人違いじゃないかな?」

「ううん。違わないよ。こよみくんだもん。」

ぎゅっと手を強く握って、いかにも一生懸命といった様子の美奈津は、さっきよりも熱心にオレを見つめる。

その視線から逃れたいオレは、髪を直すフリをしてその柔らかな手を放した。

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