苺のアップリケ
咄嗟に美奈津を振り返って、罪悪感に息が止まった。
美奈津は少し目を伏せて、オレの返事を待っていた。
けど、何て答えたらいい?
本音は最悪。
ひよりに対する当てつけだ。
オレに女を作らせようとするひよりの態度に腹が立った、それだけ。
でも、そんな本音、美奈津に言えるはずがない。
「…可愛いから」
「え?」
「……だよ。」
言った瞬間、美奈津が勢いよく顔を上げた。
その顔が赤くなっている。
一瞬合った目をそらして、空を見上げる。
ああ、神様。
オレの進むべき道は、どっち?
「…あ、りがとう。」
ぎゅっと強くなった指をつかむ手に目眩がした。