レンズ越しの君へ
「廉でイイ」


廉にもう一度言われて、あたしは慌てて笑顔を繕った。


「あっ、はい」


「俺の事は、太一君って呼んでよ♪後、タメ口でイイからね！」


「じゃあ、太一君と廉って呼びますね。敬語もやめます」


太一の言葉に、笑みを浮かべて頷いた。


「……まだ敬語だけどな」


また廉が口を挟んだけど、彼は必要な事だけしか言わない。


訊かれた事には一言で答え、自分が言いたい事があれば一言で言う。


そんな印象を持った。


この仕事をしていれば色んな人と接する機会があるけど、廉は何となく絡み難いお客だった。


「あの……さっきの話……」


控えめに切り出すと、彼がまたあたしをじっと見つめた。


全てを見透かすような廉の瞳に心の中を読まれてしまいそうな気がして、思わずドキッとした。


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