レンズ越しの君へ
あたしが行き着いた場所は、綾のマンションだった。


結局、あたしには他に行く所も無い。


仕事から帰って来たばかりだった綾は、すぐに部屋の中に入れてくれたけど…


あたしは何も言えなくて、ただただ泣いているだけだった。


「澪、お風呂沸かしたから入っておいで」


綾は柔らかい笑みを浮かべながら、優しく言った。


「うん……」


小さく頷いて、フラフラとバスルームに向かった。


力が上手く入らない。


ダラダラとドレスを脱ぐと、胸元の赤い痕跡に気付いた。


それは、廉が付けたキスマーク。


よく見ると、体中のあちこちに付けられている。


綾が何も訊かなかったのは、きっとあたしの体に付けられたこの痕に気付いたから…。


これを見れば、彼女じゃなくても何があったのか察する事は出来る。


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