レンズ越しの君へ
食事の間、廉の顔をまともに見れなかった。


その上、彼と向かい合って食べる事に苦痛すら感じてしまって、ほとんど食べられなかった。


「ご馳走様……」


「もう食わねぇの?」


小さく頷いて、テーブルの片付けを始めた。


廉が近くに来ても、まともに顔を見る事が出来ない。


「お前、まだ怒ってんの?」


「別に……」


対面式のキッチンで食器を洗いながら、廉と目を合わさないようにずっと俯いていた。


水の音だけが、キッチンに響く。


後悔しながらも廉から離れられない自分が情けなくて、泣き出してしまいそうになっていた。


「お風呂入って来る……」


食器を棚に片付けた後、それだけ言ってバスルームに向かった。


時間がある時は廉と一緒にお風呂に入るけど、たぶん今日は入って来ない。


その事に、少しだけホッとしていた。


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