レンズ越しの君へ
運転中も上機嫌の廉の横顔を見つめながら、自然と笑顔が零れた。


弾む心を抱えて彼との会話を楽しんでいると、高級そうなホテルに着いた。


あたしは初めての場所に興味津々で、周りをキョロキョロと見渡した。


「澪、こっち!」


廉はさりげなくあたしの肩に手を回して、ホテルの中に入った。


「何階まで行くの?」


「最上階」


廉に促されるがままエレベーターに乗って最上階で降りると、彼は目の前のレストランの入口にいた店員に声を掛けた。


「先程、予約した織田です」


予約……?


いつ予約したのかも知らなかったから、驚いて廉を見上げた。


だけど、彼は何食わぬ顔で店員の後ろを歩き、案内されたテーブルに座った。


「予約してたの?」


「あぁ」


未だに驚いているあたしに、廉はメニューを見ながら頷いた。


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