レンズ越しの君へ
店長は大きなため息をついて、ソファーから立ち上がった。


それからあたしに背中を向け、事務室のドアを開けた。


「ちょっ……!店長!待って下さいっ!!」


あたしも慌てて立ち上がって、店長の後を追う。


「これ以上、お前と話しててもラチがあかねぇ!」


「でも、あたしは絶対に店を辞めたいんです!」


あたしが力強く言うと、店長はピタッと足を止めた。


「お前さ……」


そして、ゆっくりと振り返りながら口を開いた。


「この仕事、好きか?」


質問の意図はわからなかったけど、あたしは大きく頷いた。


「すごく好きです!」


あたしの言葉に苦笑いした店長は、そのまま話を続けた。


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