レンズ越しの君へ
「……イさん!ユイさん!」


黒服に何度も呼ばれて、瞼を開けた。


「着きましたよ」


仕事が終わるといつも家まで送って貰っているけど、道順の関係でほとんど最後になる。


だから、疲れて寝てしまう事もよくあるんだ。


「ユイさん、大丈夫ですか?」


「大丈夫、ありがとね」


あたしは、笑顔を見せて車から降りた。


外のひんやりとした空気が、少しだけ心地好い。


廉との約束が明日に迫っているせいで、珍しく飲み過ぎて体が重かった。


さっき車で寝ていたせいか、体の怠さがピークに達している。


早く横になりたい……


すぐにお風呂に入って、ベッドに突っ伏した。


店にいれば忘れられる寂しさが、一人になると心を包み始める。


だけど、いつものようにそれに気付かない振りをして、そのまま瞼を閉じた。


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