レンズ越しの君へ
家の中に入ると、懐かしい匂いがした。


久しぶりの実家がどこか寂しく見えるのは、どうしてなんだろう…。


「二人とも入って」


「えっ?でも……」


中へ入るようにと促した嵐に、躊躇してしまう。


家出同然で出て来た手前、のうのうと玄関から先へ入る訳にはいかないような気がしたから…。


「イイから!」


嵐はあたしの手を引き、廉にも目で合図をしてからリビングへと向かった。


心臓が飛び出すんじゃないかって言うくらい、緊張している。


足がすごく重い。


足を踏み出すのって、こんなに大変だったかな……?


あたしは後ろにいる廉を見る余裕も無いまま、嵐に引っ張られてリビングの前に着いた。


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