レンズ越しの君へ
何とか12時前に駅前ホテルに着き、周りを見渡した。


そういえば、どこで待てばいいのか聞いていない。


「どうしよ……」


出掛ける時に慌てていたから、運悪く仕事用の携帯を忘れてしまった。


プライベート用の携帯では、廉とは連絡が取れない。


少しだけ不安になりながらホテルに入って、ロビーに行った。


だけど、廉の姿はどこにも見当たらない。


困り果てて躊躇していると、後ろから誰かに腕を掴まれた。


「キャッ……!」


ビックリしたあたしは、肩をビクリと強張らせて振り返った。


「俺だよ」


そこに立っていたのは、サングラスを掛けた廉だった。


「ビックリした……」


あたしは、思わず安堵のため息を吐いてしまった。


「来い」


廉は短く言うと、ホテルの入口に向かって歩き出した。


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