レンズ越しの君へ
「澪……。わかったから……」


廉はあたしの頭を優しく撫でると、荷物を持ってあたしの肩を抱き寄せた。


「澪、俺と付き合わない?」


「アンタなんか大っ嫌いっ……!」


瞳に涙を浮かべながら言い放って、一輝に背を向けた。


「帰ろう、廉……」


心配そうに見ていたスタッフ達に頭を下げて、あたし達はスタジオを後にした。


不機嫌な廉。


沈黙が流れる車の中。


あたしは涙を堪えて、廉の横顔を見つめた。


「澪、泣くなよ……」


「泣いてないよ!」


慌てて答えたあたしに、廉がフッと笑みを向けた。


「……ねぇ、怒ってない?」


恐る恐る尋ねると、彼はゆっくりと口を開いた。


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