レンズ越しの君へ
テーブルに案内されたあたし達は、向かい合わせに座った。


廉はメニューも見ないで、ずっとあたしの事を見つめている。


メニューを見ていたあたしは、彼の視線が気になって仕方なかった。


「メニュー、見ないの……?」


控えめに訊いて、廉に視線を移した。


「お前は?」


「グラタンにする」


質問に質問で返されて、とりあえず答えると…


「わかった」


廉は店員を呼んで、グラタンを二つ頼んだ。


「同じ物でイイの?」


あたしが訊くと、彼は何も言わずに小さく笑った。


それから程なくして料理が運ばれて来たけど、廉は中々手を付けずにあたしをじっと見つめていた。


「食べないの?」


「猫舌なんだよ……」


廉は、気まずそうに視線を逸らした。


もしかして照れてる……?


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