レンズ越しの君へ
夜になればこの街は危険なネオンに包まれ、お金と欲望に塗(マミ)れる。


そしてこの扉が開いた瞬間、あたしは“自分(アタシ)”を捨てて“ユイ”になる。


「いらっしゃいませー!」


あたしの名前は、ユイ。


本名は、佐久間澪(サクマミオ)。


『Princess』と言う店で、ホステスとして働いている。


お客の前では“澪”では無く、“キャバ嬢のユイ”を演じる。


この店で働き始めて2年…。


あたしは、No,3と言う地位に立っていた。


「ユイさん、ご指名です」


「はーい」


黒服が呼びに来ると、あたしは指名されたテーブルに着く。


「こんばんは、ユイです」


笑顔で挨拶をした相手は、常連客の一人だった。


「おう、ユイ。まぁ座れ!」


「失礼します」


お客の隣に腰を下ろして、お酒を作り始めた。


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