同じ空の下で
コンコン―
誰かが私の部屋のドアを叩いた。
「はい?」
「―柚奈。俺。」
その声はお兄ちゃんだった。
「どうぞ?」
―ガチャ
「風呂空いたから、次入れって、お袋が。」
お兄ちゃんはドアから顔だけを出して言った。
「うん。分かった。」
私はお風呂に向かうためにお兄ちゃんと部屋から出た。
「柚奈。」
「ん?何?」
「今日話した事、少しは考えたか?」
今日話した事。
お兄ちゃんと一緒に暮らす事だ。
「…ちょっと。」
「じゃあ、今の段階ではどう思う?」
「…分かんない。」
「………そっか。
まぁ、まだ明日もあるからもう少し悩め。」
「うん。」
そう言って、お兄ちゃんは私の頭をポンポンと軽く叩いて、階段を降りて行った。
そのお兄ちゃんの仕草でさえも先生を思い出す。
先生はいつも私を褒めてくれる時、頭を撫でてくれた。
『柚奈、よくやったな。』
そう言ってくれた先生は大きな目を細めて、私を優しく見つめてくれた。
…先生、会いたい。