同じ空の下で
大きな箱が、長い車に乗せられる。
あの箱の中には、私の大切な人が入ってる。
先生、狭くない?
苦しくない?
その中は暗いでしょ?
イヤだったら、出て来ても良いんだよ。
『柚奈、ここはイヤだから、お前の側にいさせて。』
そう言って、私を抱きしめるの。
きっと、子供みたいな顔してるんだ。
「柚奈。」
「美貴…。」
私の親友。
いつも側にいてくれる。
ほら、今だって。
美貴は私の左手をそっと、つないでくれた。
「柚奈、泣きたいなら、泣けば良いじゃん。
先生だって、今日は泣いてるよ、きっと。」
先生が…?
「でも、最後は最後くらいは笑顔で見送る。」
「……。
柚奈っ、先生はそんな我慢した笑顔なんか嬉しくないよっ」
美貴は私の手を強く握って泣きながら、言った。
「私、泣いても良いの?」
「そうだよっ!泣いても良いんだよっ!」
そう言われると、私の涙を止めていたものがスッと消えた気がした。
「ッ、ヒクッ、…ッ。
…ッせ、ん、せ、…ッ!
イ、ヤ、…イヤァァっ゛
行かないでぇっ」
「柚奈っ!柚奈っ!」
「柚奈っ!」
「イヤ、私を一人にしないって言ったのにぃ……ッ」
美貴とお母さんがバランスを無くして、崩れていく私を支えるように抱きしめてくれた。
だけど、ゴメンね。
抱きしめられると、一層先生の方が良いと思ってしまう。
先生、行かないで。
私、今泣いてるよ。
私が泣いてるとすぐ飛んで来てくれるんじゃなかったの?
先生。
先生。
先生。
一人にしないで。
―――プップップー
先生を乗せた車は別れを知らせる音を鳴らせて走って行った。
私は雨の中、ずっと先生を呼んだ。
先生。
行かないでっ!