同じ空の下で
「ただいまぁ。」
――…………。
あれ?いつもだったらお母さんの大きな声が聞こえてくるのに…。
―ガチャ
「お母さん?ただいまぁ。」
「あ、柚奈、おかえり。
今日は早かったのね。」
「うん。ちょっとあって。」
「サボりかぁ?」
え……。
この声、お兄ちゃんっ?!
「お兄ちゃんっ?何でいるのっ?!」
「柚奈を心配して、来てくれたのよ。」
お兄ちゃんは隣の県の大学に通ってる。
家からは遠いから大学の近くで一人暮らしをしてるんだけど。
「お兄ちゃん、大学は?
良いの?」
「カワイイ妹が傷ついてるのに、授業なんか受けられるかっ!」
ほんとにシスコンだなぁ。
まぁ、嬉しい事なんだけど。
「龍真(タツマ)、あの話柚奈しなくても良いの?
あなた、明後日には帰るんでしょ?」
「あぁ、そっか。」
あの話?
「柚奈、俺と一緒に住まないか?」
「えっ?!」
「お前がアイツに対しても、アイツがお前に対しても真剣だったのは分かってる。
だから、その分お前の傷はデカイと思う。」
……。
「今の学校はあまりにもお前達の思い出が多すぎないか?」
「……。」
「今の学校にいる限り、お前はアイツとの思い出に縛られてずっと立ち直る事なんかできないと思うんだ。」
思い出に縛られる?
私が?
「俺は早くお前に立ち直って欲しいし、早く前を向いてもらいたい。」
……。
「親父とは、電話で話したんだけど、親父は再来月ぐらいには単身赴任から帰ってくれしいし、お袋の事は心配いらない。それにもし、転校してもお前の頭だったらいけると思うし。
どうだ?」