姫取物語
「一体何の曲で勝負なさるのですか?」

帝と俺の知らない男の人の声が重なった。

「貴女は何が弾けますの?」

面倒臭い喋り方だなぁ……。

「とりあえず何でも弾けるけど……」

以外だろ!

「まぁ……素晴らしいですわ」

あー……別に何かすごいコメントがあるわけじゃないのね……。

「だったら『春の海』なんてどうでしょう?」

「へ? 『春の海』?」

「えぇ」

「……雅?」

「んぁ?」

「大丈夫?」

「何がぁ?」

「琴で勝負とかしたこと無いでしょ……」

「……だーいじょぶだーいじょぶ。いつも通りに弾けば良いんでしょ?」

「……」

そんなに甘くないと思うけど……。
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