姫取物語
「智隼っ?!」

美麗が智隼のそばに駆け寄る。

「美麗様……」

「怪我は?!」

「ご安心ください」

それを聞いて美麗がほっと胸を撫で下ろした。

「……すみませんでした」

「え?」

「……負けてしまいました」

「……ばかぁーっ!」

「はい?!」

いきなりの美麗の一言、ばかぁーっ! が智隼の中で谺(コダマ)する。

「……あんた……あんたいきなり……座り込んじゃって……っ!」

「え? はい?」

そう言うなり、美麗は泣きだしてしまった。

「心配……したんだからぁー!!」

「す……すみません……」

「女の子を泣かすとはなかなか罪深い人ですねぇ……」

「あー美麗泣かしたぁー。いけないんだー」
< 124 / 210 >

この作品をシェア

pagetop