姫取物語
そこでかぐやは、光はあるかな……と思って見ると、螢ほどの光すらない。

そこでかぐやは、

置く露の光をだにもやどまさし
小倉の山にて何もとめけむ

ほんとうの仏の石鉢なら紺青の光があるということです。
せめて、お流しになったという涙の露ほどの光でもあればよいのに。
あなたは、光がなくて暗いという名前をもつ小倉山で、いったい何を求めていらっしゃったのでしょうか?

と返し、その鉢を皇子のもとに返す。

皇子は鉢を外に捨て、返歌をする。

白山にあへば光の失するかと
はちを捨てても頼まるるかな

光っている鉢を持ってきたのですが、白山のように光り輝く美女にあったので、おし消され光が失せているだけで、ほんとうは光る鉢ではなかったかと、鉢を捨ててしまってからも、恥を捨ててあつかましく期待されるのですよ。
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