姫取物語
先ほどまでいたところと違う場所に移動して、ふんわりとどこかで嗅いだことのある香りがした。

「あれ……?」

そう遠くない、前に嗅いだことのある香りだ。

「?」

「この香り……」

「香り……?」

「どこかで……」

「あぁ、この香りね……」

「はらぁ……?」

かぐやはそのままうーん……と考え込んでしまった。でも、この香りは常に鼻を霞めているはずだ、何故なら……。

「帝の香り……?」

「うん。そうだね」

「何で……?」

「多分、この木が一番多く入ってるからじゃないかな?」

そう言って帝がさした香木は、柊木犀(ヒイラギモクセイ)クリームのような香りのする香木だ。
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