姫取物語
「また新しい求婚者だよ」

婆さんが小声で言った

「……うげっ……」

今日は終わりじゃなかったっけ……?

「……帝が来たんだよ」

「……みかど……?」

「みかど」という名の意味がよく分からなくて、かぐやははて? と首を傾げた。

「天皇だよ。じゃ、いつも通りにね……」

俺は頷いた。

天皇が男相手に求婚か……。良い笑い話だ。

と、一人の男が近づいてきた。

「……貴女がかぐや姫ですか?」

帝が隣に座るととふんわりと良い香がする。

「……」

俺は帝の問い掛けに対し、顔を上げず、俯いたまま。
そうすれば乗り気じゃないのが一発で分かるだろう。

「顔を見せていただけませんか?」

絶対嫌だ!
何で俺が顔を見せなきゃいけないんだ!

「……っ?!」

帝が顔を上げまいとしていたかぐや姫の顎を持ってかぐやの顔を持ち上げた。かぐや姫の顔は簡単に帝の瞳に映った。

しかし、何も言ってこない帝に対して意味が分からないかぐやは小首を傾げた。

何か用?っていう意味を込めて。
< 8 / 210 >

この作品をシェア

pagetop