Love story's
震える腕では香坂君を抱き締め返すどころか、彼の背中に手を添えるだけで精一杯だった。


それでもきっと、あたしの気持ちは伝わっていたと思う。


だって、あたしを抱き締めてくれる香坂君の腕に、少しだけ力が加わったから。


お互いに様子を窺(ウカガ)うような、ぎこちない抱擁(ホウヨウ)。


だけど…


恋愛初心者のあたしには、もういっぱいいっぱいだった。


だから、今にも飛び出してしまいそうな心臓を押さえようと、香坂君にはバレないように小さな深呼吸を繰り返していた。


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