Love story's
「杏里!」


あたしが歩き出すよりも早く、雷が駆け寄って来た。


一瞬の沈黙の後、彼が口を開く。


「帰んの?」


そう訊いた雷の視線から逃れるように、彼から目を逸らした。


「雷君!その子、何なん?」


さっきの女の子は、雷に訊きながら近付いて来た。


「……雷君の知り合いなん?」


女の子は拗ねたような表情で彼を見上げた後、あたしを軽く睨んだ。


さっきまでのトロンとした表情は、今の彼女には微塵も見えなかった。


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