ひとひらの願い―幕末動乱―
そう沖田さんに問われたけど、何故か私の口は開かない。


戸惑っている私を見た土方さんは、しゃあねぇな、と私の代わりに名前を言ってくれた。


「こいつぁ、高蔵 織っていうらしい」


鬼も仏になるもんだな……って、正直思ってしまった。

さすがに口にはできないけど……


「なるほど。そりゃあ女だな」

「女でも…男でも、関係ないですよ。……稽古しません?」

「え?」


何言ってるんだろ…沖田さんは……
私が女だと知った上で……


「何言ってやがる総司。隊士に童(わっぱ)も女もいらねぇ!」

「そうですよ、沖田さん…」


私も止めようとした。

でも…それでも話を進める彼の瞳は、何故だか本気に見えた。


「剣術、できますか?」

「はい。家で道場開いてるので、一応はできますけど……」


私は嘘をついた。

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