ひとひらの願い―幕末動乱―
それにしたってひどい……

沖田さんはその言い訳に対して、謝りもしない。

まぁ、土方さんがいるからかもしれない-…


そんなことを考える余裕がなかった私は、言ってしまった――…


「……沖田さん、嫌いです!!」


彼の言うことが単なる言い訳だっていうのに、私こそひどいことを口走ってしまった。


「なぁ、埒が明かねぇじゃねぇかよ。……山崎」

「―はい、そうですね」


知らぬ間に山崎さんが戻ってきていることに、私は驚いた。

でもその時、私はその場から逃げた――…


「あっ……織さん…!」


後ろから、沖田さんの私を呼び止める声が聞こえた。

…それでも、私はどこかに向かって走った。


今の気持ちじゃ、後ろなんか振り向けない。

振り向いたら、自分の弱い心に負けて、涙が出てしまいそうになる。


――心が、酷く痛む。


自分でも分からないほど、心に何か引っかかっている気がしてならない。

この気持ち……

…分からない。


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