ひとひらの願い―幕末動乱―
すると副長は、鼻でフッと笑った。


「小姓やってもらうんだ。そんぐらいしてやんのも、仕方ねぇこったろ」

「そうですか…」


夢を、見たのか-…


小さな窓から見える空は、もう茜に染まり始めていた。
闇に飲まれる夕暮れが近づいている。

そんな時、私の体はまた震え始めた。


「あ…れ? 私、何で震えて……」


つい、呟いてしまった。

その小さな声さえも聞き逃さなかった副長は、ずっと向けていた背をピクッと動かし、こちらに向き直った。


「大丈夫か? さっきも倒れる前、震えてたぞ」

「今度こそは大丈夫なはずです…」


―何で震えてるの!?止まって…!!

そんな願いさえも今の私の体は聴いてくれなくて、止めようとすればするほど、私の体はさらに震える。


「大丈夫なわけねぇだろ! そんなに震えていやがるってのに…しょうがねぇな-…」


スッ……


「えっ…? 副長、何やって」

「黙ってろ」


突然、副長は、私のことを抱きしめてくれた。


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