ひとひらの願い―幕末動乱―
あ? 言ってなかったか、と副長は言った。

聞いてないですからね? 副長…


辺りは、さっきよりも暗くなり、夕方というよりは夜。

さっき寝ていた私は、また寝なきゃならないらしい。

いや、それより…どこで-…!?


「俺の小姓だから、ここで寝てもらう」

「……」


ん? 今、何て言った…?
リピートリピート-…



『ここで寝てもらう』―――…


…ここで寝てもらうぅぅぅ!?

もう一回言うけど、そんなこと聞いてないですよぉぉ!?


驚きのあまり、私は口をぽかんと開けて、唖然としていた。


「安心して寝とけ。ここには滅多に人も来ねぇ。せいぜい、山崎ぐらいだろ」

「山崎…さん? あ、あぁ。監察方でしたっけ」


その名前を聞いて動揺している私。
…やっぱりおかしい。


何でなんだろ、この胸の動き。刻む鼓動の速さ。

今のこの状況でさえ、胸は高鳴っていたはずなのに。


…え。さっきまでも?


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