ひとひらの願い―幕末動乱―
自分の気持ちがよく分からず、一人混乱していると、副長から声がかかる。


「高蔵。やっぱり今のお前、らしくねぇよ」

「えっ!? …ですかねぇ……」

「…それじゃあ行けねぇな」


意外と心配してくれているよう。

副長は、鬼と言われていても、こういうところとかで慕われていたんだなって、つくづく思う。

もちろん、私も慕っている。
沖田さんも、山崎さんも、みんな。

まだ会ったことのない隊士達でも、当然、私より目上の人。
それに剣の腕だって、私よりも上。

慕って当たり前の世界の中に、私はいる。

でもその中で特別に見てしまう人――…
…実はいるのかもしれない。


そう考え込んでいるうちに、ふとさっきの副長の一言を思い出した。


「ん? 副長。"行けねぇな"って、どこにですか?」


突然の質問に、副長はあぁ、と呟くと、立ち上がった。


「昼頃の古高の、仲間探しに行くんだよ。京の町が危ねぇからな」


そういえば昼頃、枡屋 喜右衛門もとい古高 俊太郎を捕縛して、副長が拷問した。


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