ひとひらの願い―幕末動乱―
「私は修羅です。人斬りなんて、怖くないですからね、沖田さん」


人斬りは、未来でも今でも昔でも、殺人。

それを簡単に成せる女なんて、そうそういないはず。


それが成せるのも、この人の隣にいられるから。


憧れていた時代に、憧れていた人と一緒にいられて。

居場所まである。

その恩返しと言っては微妙だけど。


戦って、それで恩を返すことができるのなら。


―だから私は戦うんだ。

居場所をくれた貴方達。
いや、貴方に。


今宵、感謝の意を込めて。


「私は戦うことを選んだんです」


局長が戻ってきた時、真剣に私は沖田さんに向かってそう言った。

彼にそんなことを言ったら、笑われそうな気がしたけど。
沖田さんは決して笑わなかった。


「貴女は強いですね…」


ぽんっと私の頭を撫で、そう呟いては、沖田さんは先を進む局長に走り寄った。


…またこの宿も違ったんだ。

もう何軒の戸を叩いたんだろう。


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