ひとひらの願い―幕末動乱―
第8章 鈴の音色と
暗闇に紛れて、貴方は私に声をかけてくれた。


「―どないしたん…?」


貴方……山崎さんは、まるで私を待っていてくれたように、小路に潜んでいた。

局長やみんなはもうだいぶ先を走っている。
追いつけそうにないくらい、距離が空いていた。


「山崎さん……どうしてここに?」


山崎さんのいる小路に入り、向かい合ってから、私は静かに聞いた。

心が読めるから、ここにいたんだろうな……


「さっきは悪かった。永倉さん達にあんたの心を露わにする気はなかったんやけどな。……悪かった」

「いや、別に…っ! そんなに謝らなくてもいいですよ」


答えにならない言葉を言う山崎さんは、どこか暗い表情を見せる。
そのせいで、余計に切なくなってくるんだ。
胸が苦しくなるほどに。


「ここであんたを待ってたんは、そう言う為やない。他に用があってな」

「用が? ……私に?」

「あぁ、そや」


静かに頷く山崎さんはよく見てみると黒装束で、忍だと思わせるような格好をしていた。

本当に、忍なんだ。


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