ひとひらの願い―幕末動乱―
「もしこれが最後やったら、さよならやな」


少し俯いて、今度はそう言った。

山崎さんも私も、一つも体を動かすことなく、会話をしている。
でも、山崎さんにそんなことだけは言われたくなかったんだ。

私を突き放すような、自分も、きっと相手をも辛くさせるような台詞を。
言ってほしくはないんだ。


「そんなこと言わないでくださいよ…っ」


ついに私は泣いてしまった。

地に落ちる涙が、頬を伝う涙が、目に溜まる涙が。
何かを訴えようとしているけれど。

その"何か"が、私には分からないんだ。


「…せやけど」


山崎さんはようやく顔を上げた。逆に、俯く私。

早くしないと、みんなに追いつけなくなって、本当に迷子になりそうなくらい、私達の間には時間が流れていた。


ドン… ドン……


時を知らせる太鼓の音が、体中に響いた。

それと同時に、山崎さんは口を開いた。


「―"さよなら"は別れの挨拶やない。"また会えますように"っちゅう祈りや」

「また、会えますように…」


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