ひとひらの願い―幕末動乱―
今まで別れの言葉だと当たり前のように思っていた。


でも、彼は違うと言う。


例えるなら、"春は別れの季節でもあり、出会いの季節でもある――…"というような。


"さようなら"は、そういう意味なんだ。


「そや。俺達はいずれまた、どこかで会うってな」


そう言うと、山崎さんは私に背を向けた。

私が当たり前のように思っていた方の意味が、頭をよぎる。


「…だから、"さよなら"や」


違う方の意味なのだろうけれど、私には聞こえた。


"もうあんたとは、会えない気がするんや"


その言葉を思い出したら、"さようなら"はさようならのままな気がした。


「山崎さんっ!! 待っ…」


だから引き止めたいんだ。
…でも、ここで引き止めちゃ駄目だよ……


何の意味があるの……?

何をする気なの……?


―私は何がしたいの――…?


何をしようとも……

引き止めなきゃ駄目だ……!


「山ざ……あれ!?」


呼び止めようとして、『山崎さん』と言おうとした。…あれ?


< 59 / 98 >

この作品をシェア

pagetop