ひとひらの願い―幕末動乱―
確実に忘れていたことを、今思い出した。


―私、副長の小姓――…


…ぁぁあああっ!!
って叫びたいくらい、忘れていた。だけど、静かすぎて叫べない。


これこそ大変だ……


小姓のくせに、局長についてくわ、おまけに迷うわ……

ついでに鬼の副長に怒られるわ……ってなりそう。


あれ、でも副長が局長の隊にしてくださったんだっけ。
…それなら仕方ないか。


途中、道を右に曲がってみる。

どうも、副長のことが気になりだして。

怒られないという確信はあるけれど、小姓だから。

小姓なら、その人と常に一緒に行動しなきゃ、って思うから。

これで副長達に会えればいいのだけれど……

そんな簡単にばったり会えるなんて、考えられない。


やっぱり小姓なら、はじめから副長について行けば良かったような気がしてならない。



「―お。高蔵! お前、こんな所で何してんだよ!」


「え?」


歩いていく方向の遠くに、何人かの人影が見える。


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